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 11.脱出編

1、脱出 

  脱出にはいつでも挑戦できる。挑戦自体は導入編の直後でも可能であるが、成功できるかは別問題である。脱出に必要なものは以下の通

 りである。

  ・えんふくさまへの対抗策

  ・周辺の地図(主要道路上に点在している集落は全て狂信者側の罠である。また、山中を行く場合は地図がなければ遭難は必至である)

  ・陰陽石(自分の記憶を取り戻すため)

  なお、最悪の場合、記憶を失ったままでの脱出も可能であるため、厳密に言えば陰陽石は必要ではない。この項で記すのは様々な条件で

 挑戦する脱出イベントであり、KPはこれらを元に探索者の状況やその時々に応じた脱出イベントを発生させるものとする。

  シナリオ目標と報酬であるが、再度以下に示す。

  ・メイン:街からの脱出

  ・サブ①:記憶の回復     成功報酬SAN+1d4 失敗SAN-1d10

   サブ②:協力者の生存    成功報酬SAN+1d4 失敗SAN-1d4

   サブ③:えんふくさまを撃破 成功報酬SAN+1d6

   サブ④:石像の破壊     成功報酬SAN+1d4

 

 

 

2、狂信者の対応・対策 

  当然であるが、狂信者としては探索者が脱出しようとするのを黙って見逃すはずがない。しかしあまり大事にしてしまっては町内にいる

 他の住民(のうちお参りを終えていない者)に影響を与える可能性を危惧し、町内ではなるべく荒事を避けようとする。なので脱出する

 に対しては周辺集落や近隣市町村への街道上で対処することが多く、車止めのスパイクやバリケードなどを用いて逃走の妨害を試みる。

 『車止めのスパイク』のイメージがつかなければ以下の画像を参照

  http://www.ostrich.co.jp/wps/wp-content/uploads/2017/01/MS25.jpg

 

 

  狂信者が一定の情報を掴み、何者かに脱出される危険性があると判断する基準は以下の通り。これらを満たすと狂信者は脱出を警戒し、

 備えることになる。

  ①探索者達が脱出計画を立てていると橘田が掴む

  ②陰陽石が盗まれる

  ③イベントNo.008で大村の確保に失敗する

  ①の場合は言わずもがな。②の場合、盗んだ者が記憶を完全に取り戻す可能性があるため、狂信者としても悠長に構えている余裕がなく

 なるのである。ただし上記の理由で町中での荒事を避け、街道上にバリケードを用意する。③の場合も同様に、警官に歯向ってこれを倒し

 た挙句、武器を手に入れた可能性がある危険分子が町中にいれば当然警戒態勢に移る。

  バリケードの敷設場所や方法、所要時間など、敷設完了までの流れを記す。まず上記①~③のような状況に陥った場合、役所や警察署、

 診療所などの無線機から周辺集落3つへ連絡がいく。状況報告を受けた周辺集落の狂信者はあらかじめ決められた敷設場所に対し、それぞれ

 数人(探索者+2人)の狂信者を送り、バリケードを設置させる。

  敷設場所であるが、周辺集落から車で30分前後の街道上である。車一台通るのがやっとの山道で、道は急斜面を横切るように通ってお

 り、道の左右共に車などの乗り物では通行できない。急斜面に加えて木も生い茂っているため、いくら<運転(自動車)>に習熟していたとし

 ても事故は免れないだろう。

  敷設方法であるが、まず分乗してきた2台の車で道を遮り、車での通行ができないようにする。そして車のバリケードから黒ヶ峰町側およ

 そ10メートルほどの地点に、車止めのスパイクを道幅いっぱいに設置する。スパイクを回避するためには、走行中に<目星>でスパイクを

 発見し、<運転(自動車)>で安全に停車させる必要があるだろう。もしもスパイクを踏んだ場合、全てのタイヤがパンクし、車のコントロー

 ルが効かなくなる。安全に停車させるためには<運転(自動車)>が必須だろう。失敗した場合、バリケードへの激突や斜面の落下によって

 1d6~1d10のダメージを負うだろう。

  ここまでの所要時間であるが、周辺集落からの移動時間が30分前後、スパイクの設置が5分以内、そして狂信者が身を隠すのに15分以内の

 計50分弱。黒ヶ峰町からの移動時間を考えた場合、仮に探索者が車で黒ヶ峰町を出るのと同時に狂信者が無線連絡を行ったとしても、バリ

 ケード敷設前にこの地点を突破することは不可能である。

  最後にバリケードを用いた待ち伏せの方法であるが、狂信者は2手に別れて身を隠し、逃亡者が車を停めるのを待ち構えている。狂信者は

 逃亡者の車がスパイクによって停車すると仮定しており、そこから左右後方、拳銃の射程内に身を隠している。待ち伏せされる逃亡者の側

 からすると、前方の道をバリケードで塞がれた上で、左右後方の斜面から現れた狂信者達に銃撃を加えられるという状況に追い詰められる

 だろう。

  この待ち伏せを突破する方法であるが、言うまでもなく力押しは論外である。人数、装備、戦術などあらゆる面で遅れを取っており、仮

 に拳銃の扱いに長けている場合や武道などの近接戦闘技能を取得している場合も旗色は悪い。狂信者は木に身を隠しながら、探索者は(お

 そらく)車に身を隠しながらの銃撃戦になると予想されるため、弾薬を多く所持し、包囲している狂信者の方が有利だろう。近接戦闘を仕

 掛けようにも急斜面の移動だけで時間を取られる上、劣悪な足場で十全に技能を発揮できるかという点を考慮しても近接戦闘は良い選択と

 は言い難い。

  また、夜間に戦闘が発生した場合はえんふくさまが同時に襲ってくる可能性もあるため、輪をかけて絶望的である。というかそうなった

 ら十中八九死ぬ。

  もしも戦闘を行ってここを突破するならば、<目星>を成功させてスパイクを踏まずに車を停車させた上で、一度車を下がらせて態勢を

 整えてから再度戦闘を仕掛けると良いだろう。

  もちろん、最善なのはこの待ち伏せ自体を回避することである。黒羽や大村が脱出に同行していた場合、周辺集落を抜けてしばらくした

 辺りで待ち伏せの可能性を懸念し、進言する。または、<追跡(※1)>に成功した場合、ごく最近車が通行した痕跡に気が付くことができ

 る。

  待ち伏せを回避するのに最も有効な手法は、車に頼らずに徒歩で山中を移動することである。どこを通るかわかっているから待ち伏せや

 追跡が容易なのであって、機動力こそ落ちるが広い山中を徒歩で移動してしまえば待ち伏せされることはまず有り得ない。なお、街道沿い

 を徒歩で行くのは最悪の選択肢である。

 

 

 ※1:なぜ<目星>では駄目なのか?

   ここで肝心なのは"ごく最近車が通行した痕跡"である。<追跡>という技術と知識に基づかない観察ではこれを発見することは難しい

  だろう。今回で言えば以下のような具合である。

 <目星>→地面に折れた木の枝と、土に残るタイヤ痕を発見した。

 <追跡>→折れた枝の断面が比較的白くて綺麗なままだ。汚れや劣化の具合を見るに、これを折った何者かが通ってから数日単位の時間は

      経っていないということだ。土に残るタイヤ痕も同様の情報を示している。

   ルールブックP.84の(目星)の項目には「この技能を使えば、(中略)待ち伏せしている敵に気がついたりする」との記載もあるが、筆者と

  しては、これは「隠れて待ち伏せしている敵を発見する」というはたらきをする技能であると考えている。すなわち、<目星>とは「"つ

  い先ほど敵が待ち伏せの場所まで移動した痕跡"に気が付く」技能ではなく、この場合に用いるのは不適切である。

   なお、どうしてもプレイヤーを救済したい場合などは<目星>+<アイデア>などを用いて"ごく最近車が通行した痕跡がある"と仄めか

  せば良いだろう。あくまで明示ではなくやんわり伝えるのみである。

 

 

3、脱出成功までの流れ 

  これまでのイベントや上記の待ち伏せなども踏まえ、脱出成功までの流れを記載する。理想的な流れとしては、①記憶を取り戻してえん

 ふくさまを影から追い出し、②待ち伏せにされることなく山中を抜け、③狂信者の追跡を回避し、④えんふくさまを撃退することである。

 以下に詳細を記載していく。

  また、地図を所持した上で<ナビゲート>に成功しなければ山中を踏破することはできない。方位磁石などの道具があれば+20%の補正を

 加えても良い。<ナビゲート>に失敗した場合であるが、山中を彷徨った挙句、元の街道に戻ってきてしまう。さらに<幸運>にも失敗し

 た場合は巡回していた狂信者に発見されるだろう。もしも<ナビゲート>でファンブルを出そうものなら、黒ヶ峰町や周辺集落に戻ってき

 てしまうだろう。

  脱出するためには<ナビゲート>を成功させて山中を突破するか、狂信者との戦闘を覚悟して街道を進むかである。

  上記①と②であるが、これらはすでに記載しているため割愛する。また、バリケードでの戦闘に勝利した場合を⑤として記載する。

 

 

 ③狂信者の追跡

   狂信者は上記の待ち伏せだけでは不十分として、黒ヶ峰町および周辺集落から追っ手を出している。狂信者は探索者の人数+2人(最大

  4人)で1組として、探索者の目撃情報があった方面を中心としてそれぞれ数組派遣する。狂信者の追跡を攪乱するためには<隠す>+<追

  跡(※2)>に成功して移動の痕跡を消すのが確実である。また、数百メートルほど川の中を移動するといった方法も有効である。

   こういった対策を取らず、狂信者の<追跡(75%)>が成功した場合は狂信者に襲われることとなる。<隠す>+<追跡>に成功した場合

  は狂信者の<追跡>を半分にするか、または-50%の補正を加えて判定すると良い。また、<幸運(クリティカルのみ)>で雨を降らせて狂

  信者の<追跡>自体を不可能にするといった方法もある。もっとも、雨天でえんふくさまに襲われるのは最悪であるため、夜までに雨を

  止めてあげないと探索者がひどいことになる。

   上記とは反対に、<追跡>にプラス補正を加えることもある。探索者が夜間に松明や懐中電灯で視界を確保して移動(または休養な

  ど)をしていた場合、狂信者の<追跡>に+50%を加えて判定を行う。しっかり痕跡を消していたとしても一気に発見されるリスクが高ま

  るのだ。これを防ぐためには、<幸運>でちょっとした洞穴を発見するか、<製作(アウトドア系)>で即席のテントを作るなどして光を

  らしにくい環境を用意すると良い。

   黒羽や大村が同行していた場合は夜間に灯りを使おうとする探索者を止めるだろう。しかし、えんふくさまの<暗雲>に覆われた真っ

  暗な山中を夜間に何の光源もなしに移動するのは極めて危険であるため、休養を取るしか無くなるだろう。夜間であれば<隠れる>に大

  きな補正が加わるため、狂信者から身を隠すことも容易である。

   もしも夜間に襲撃された場合、狂信者は自分達の懐中電灯などを消してから襲って来る。探索者が光源を持っていた場合、そこに向け

  て暗闇から発砲してくるのだ。そして探索者が松明などの自然光を消してしまうと、待ち構えていたかのようにえんふくさまが襲いかか

  ってくるだろう。

 

 

 ※2:なぜ<追跡>が必要なのか?

   ここでも※1に類似した理由で<追跡>を組み込んだ。<隠す>は何らかの物品を人の目につかないようにする技能であるが、移動の痕

  跡を隠すような場合にはそれだけでは不十分である。一言で移動の痕跡と言っても実際には様々な痕跡があり、<追跡>に関する知識が

  なければ"隠す技術はあるけど何を隠せばいいかわからない"、または"足跡は隠蔽はしたが、思いがけず他の痕跡を残してしまい発見され

  た"という状況に陥るだろう。

   追う者に対して最も有効な対策を講じることができるのは、同じ追う者としての技術を持つ者である。よって、上記の理由から<隠す

  >+<追跡>という判定にした。

 

 ④えんふくさまの撃退

   えんふくさまの<影読み>により、暗雲に覆われた山中では間違いなく発見されるだろう。また、記憶を取り戻せず、えんふくさまが

  影に潜んだままの状態で脱出に臨むのは最悪である。万が一、えんふくさまが影に潜んだまま狂信者と戦闘になった場合、それが夜間で

  あれば戦闘中に影から出現し、致命的な状況に陥るだろう。

   えんふくさまは夜を待って行動を開始する。特徴的な真っ赤に燃える3つの輝きは夜の山中では目立つため、ちゃんと周囲を見ていれば

  不意打ちされることはないだろう。なお、ここまで影に潜んでいた場合は不意打ち扱いでその影の主を襲わせると良い。

   また、探索者全員が松明などの自然光で辺りを照らしていた場合、えんふくさまは勝ち目がない。松明を持っている者の周囲1メートル

  に近づいただけでダメージを負うのだから当然である。その場合、えんふくさまとしては橘田をはじめとした狂信者が頼りである。橘田

  は探索者が不利になるような、狂信者達に見つかりやすくなるような行動を促してくる。また、戦闘になり、チャンスがあると判断すれ

  ば自然光を消そうとしてくるだろう。焚き火を囲んで休息を取っていた場合などは、見張りを買って出て探索者が寝静まった後に火を消

  そうとする。

   橘田や狂信者が自然光の始末に失敗した場合、えんふくさまとしては手も足も出ないため攻撃を仕掛けてくることはない。この場合は

  戦闘すら行わずにシナリオをクリアすることすらできるだろう。

   戦闘を発生させずにシナリオをクリアした場合であるが、記憶を取り戻していた場合は何の問題もない。しかし、万が一記憶を取り戻

  せず、影から追い出せなかった場合はすんなりと元の生活に戻れるわけではない。その場合、えんふくさまを連れ帰ってしまった探索者

  が死亡してシナリオ終了となるか、脱出した者を全員排除しようとするえんふくさま(あと生きれてば橘田)と探索者が生き残りを賭け

  て戦うシナリオに発展させるかである。

   探索者が自然光を用いずに懐中電灯などで山中を移動していた場合や、自然光を消して休息を取っていた場合はえんふくさまの出番で

  ある。探索者が移動していた場合はその後方から、休息を取っていた場合はしばらく時間が経過し、気が緩んだ頃合に襲いかかってく

  る。寝静まってから襲いかかる、真上から襲いかかる、<物質透過>で地中から不意打ちをかけるなどを行うと凶悪すぎるため、なる

  くやめてあげよう。

   シナリオ管理的な観点から言えば、ここで肝要なのは探索者が"探索を通じてえんふくさまのへの対策をきちんと練っているか"および
  
"状況に正しく対処できているか"の2点である。この2点を満たしていればきちんと探索・攻略ができているということであり、前述の
  うに戦闘すら行わずにクリアしてしまっても良いと思っている。その場合、赤くまたたく瞳のような輝きが探索者の周囲を漂う、光に

  らされて黒い煙のようなものが一瞬見えるなどして緊張感を保たせよう。

 

 ⑤バリケードを突破

   バリケードでの戦闘に勝利した場合、乗ってきた車はおそらく使い物にならないが、狂信者の車を奪うことが出来るだろう。<幸運>

  で車両に傷がなかったかを判定し、死体から鍵を取ることで車両を使えるだろう。バリケードを撤去さえすれば車での逃亡を継続でき

  る。

   この場合のえんふくさまであるが、自然光を持っていなければやはり襲ってくる。襲われた場合、危険な山道を走行しつつ振り切らな

  ければならないため、<運転(自動車)>が必要となるだろう。これに失敗した場合は運転技量不足と狭い道幅のせいで速度を十分に出

  せなかったとし、えんふくさまを振り切れない。戦闘中は運転手が毎ラウンド<運転(自動車)>に挑戦しても良く、運転技能に成功し

  た場合、陰陽石の浄化の可否によって振り切るのに必要なラウンド数が変わる。陰陽石の浄化に成功していた場合は2R、浄化できていな

  い場合は5Rの戦闘を耐えれば振り切ることができる。加えて、えんふくさまに一切ダメージを与えられない場合、同じように何度も襲っ

  てくるだろう。

   また、橘田が同乗していた場合は自然光を消したり運転手に危害を加えるなどして妨害を行うだろう。橘田からの妨害や<運転(自動車)

  >のファンブルなどで衝突事故を起こした場合、速度や状況にもよるが1d6~1d10ほどダメージを受け、同時に移動手段を喪失するため

  非常に危険である。

 

 

4、その他 

  その他、エンディングになんらかの影響を及ぼすと想定される要素である。

 

 ▼周辺の集落に立ち寄ってしまう

   内外からの通行人に対する監視所的な存在である集落に対し、助けを求めるなどして立ち寄ってしまった場合。集落の住人は極めて丁

  寧に、さも探索者達を気遣うような対応をする。そして何があったかを安全な場所でゆっくり聞くためと称して交番に行こうと提案す

  る。もしこれを承諾し、交番に行ってしまった場合は、下記『吊るされたよそ者END』となる。

   交番へ行くことを拒否した場合は、力ずくでも連れていこうとする。もしここを逃げ延びた場合でも、黒ヶ峰町からもえんふくさまや

  追手が出るため絶望的な状況には変わりない。ここに立ち寄ってしまった時点で生還の可能性は一気に低くなるだろう。また、橘田は進

  んでこの集落に探索者を連れ込もうとする。

5、エンディング 

  これはここまでのイベントから予測されるエンディングの一例である。ここに記載されているものでなければならない、というわけでは

 ないため、ここに記載された一例やこれまでのシナリオ進捗に合わせてKPが用意すると良い。また、一定の条件を満たすと特殊エンディン

 グに派生する(大概はろくでもないためこちらにいかない方が幸せ)。

  シナリオの進捗によって色々なエンディングが想定されるため、以下に情景描写や後日談などを状況ごとに用意する。KPはそれらを組み

 合わせたり、探索者の人物設定に合わせたシーンを追加したり、これまでのシナリオの進捗に打って付けなシーンを作るなどしてシナリオ

 の最期を飾るに相応しいエンディングを作ろう!

 

 

 ○情景描写

   日中に移動していた場合と夜間に移動していた場合の2パターンのみである。ここで描かれるのは生きて森を抜け、街を発見する探索者

  たちの姿である。

  ▼日中に移動していた場合

    探索者達の視界に光が広がっていく。鬱蒼と生い茂っていた木々がまばらになり、時折太陽が顔を覗かせる。しばらく歩くと、眼下

   に雑多な建物が立ち並ぶ街が広がった。まだおぼろげに輪郭が見えるだけだというのに、ここまで喧騒が伝わってきそうにも思える。

   目的地は見えた。奴らももう追ってくる気配はない。あとはあの街までたどり着くだけだ。  

  ▼夜間に移動していた場合(※3)

    おぼろげな薄明が森に吸われ、木漏れ日が探索者達を照らしていく。沈黙していた鳥達の囀りが生命の存在を感じさせてくれる。空

   想か現実か、身体が温かなものに包まれていくかのようだ。追跡者の気配が無くなった黎明の森を歩いていると、ふと視界が開けた。

   その眼下には、雑多な建物が立ち並ぶ街が広がっている。朝焼けの赤で染まる街は何とも言えない光景だ。あとはあそこへたどり着く

   だけだ。

  ※3:夜間ちゃうやんけ!

   探索者の生還のシーンであり、希望感を演出するなら夜間より日中の方が良いと判断したため夜明けにした。街の夜景を描くのも素

   らしいが、生還したにも関わらずまだ闇の只中にいるというシチュエーションはそれらしくないと感じる。とりわけ本シナリオは影や

   光が大きな意味を持っているため、生還した探索者達は光に包まれてほしいのである。夜間が良ければ各自自作していただきたい。

   要するに筆者の個人的な趣味嗜好。ちなみに日中より夜明けのシーンの方が気に入っている。

 

 ○後日談

   文字通り、探索者が生還した後の話や黒ヶ峰町の処遇など、個人的なものから狂信者の目論見などシナリオのバックボーンに関わるも

  のまで。ただし、探索者の個人情報に関係するものは筆者に用意できないため、各KP任せとなってしまう。本当に申し訳ない。

 

  ▼記憶を取り戻した

    全てを思い出し、元の生活に帰ることができる。捜索願が出されているため、警察へ駆け込むと保護されることとなる(または街に

   入ってしばらくすると保護される)。

    その後、紆余曲折(警察に話した場合は下記を参照)の後、探索者は元の生活に帰ることができる。記憶を植えつけられ、超常的な

   体験をした傷は早々には癒えないだろうが、きっと時間が解決してくれるはずだ。

  ▼記憶を取り戻していない

    生還するも、黒ヶ峰町以前のことは何も覚えていない。捜索願が出されているため警察へ駆け込むと保護されることとなる(または

   街に入ってしばらくすると保護される)。そして元の生活へ戻してもらえるが、聞き齧った情報だけの、ほとんど覚えていない生活に

   はどこか馴染めない。警官の勧めで精神病院へ通ってはいるが、全て思い出すには相当の時間が必要だろう。

    時折、ここでの生活が偽りのものに感じることすらある。一体私はどこにいるのだろうか。捏造された記憶の集大成にすぎない私

   は、今どこにいるのだろうか。

 

 

  ▼えんふくさまを影から追い出していない。

    考えられるパターンとしては2つ。えんふくさまを連れ帰ってしまった探索者が死亡してシナリオ終了となるか、脱出した者を全員排

   除しようとするえんふくさまと探索者が生き残りを賭けて戦うシナリオに発展させるかである。ただし後者の場合、そんなもの1片たり

   とも作っていないため『俺達の戦いはこれからだEND』になる。

    前者後者共に、描写としては日常生活に戻った探索者の背後でえんふくさまの特徴である"真っ赤に燃える3つの瞳が合わさったよう

   な輝き"がまたたくなどして存在を仄めかせ、その後の結果を描写すると良い。往々にして、明確な描写より想像の余地がある方が不気

   味なものである。

  ▼橘田の正体を見抜けず、連れ帰ってしまう

    橘田は共に生還した仲間であるとしてその後も連絡を取り続け、生還後の探索者を探る。その後の展開はKPにお任せする。考えられ

   る展開としては、黒ヶ峰町の存在を知っている探索者に対する口封じのために再度拘束しようとする。または家族や友人を脅迫のタネ

   として操ろうとする。えんふくさまが生存していた場合は暗殺を試みるなど、様々なものがある。ただし今後の話など1片たりとも作っ

   ていないため以下割愛。

    描写としては、生還した探索者の周囲を暗躍する不穏な集団を描くと良い。自宅や通勤路で視線を感じる、自宅の前に毎日同じ車が

   停まっている、職場の人間が姿を消したかと思えば何事もなかったかのように3週間後に帰ってきたなどである。これらは探索者への牽

   制も兼ねているため、狂信者にとってはバレても問題ない。

 

 

 

  ▼警察に全て話す

    警察に相談した場合、末端の人間は非現実的だと思いつつも話を聞いてくれる。ただし、近隣市町村の警察関係者の上層部は記憶の

   操作や贈賄などによって口封じされており、捜査は警官数名が送られて形式的なものしか行われない。探索者が何らかの証拠を提示し

   た場合も同様であり、全て握りつぶされることとなる。そればかりか、拳銃など不法な物品を所持していた場合は拘束され、法で裁か

   れるかもしれない。

    この地域の警察や自治体、マスコミの上層部は記憶の操作や贈賄で狂信者側の人間と化しており、脱走者が出た場合などの火消しに

   あたる。黒ヶ峰町の存在隠蔽における最後のフェイルセーフであり、上手くいかなかった場合は即座に黒ヶ峰町を放棄して全ての証拠

   を隠蔽する。

    夢も希望もないエンディングにしたいのならば、ここで拘束された探索者を署長が狂信者に売り飛ばして黒ヶ峰町に送り返すことも

   できる。ただ、ここまで長時間の探索を頑張り、努力を重ねて生きて帰ってきた探索者に対してあまりにも酷い仕打ちであるため、ドS

   なKP達も自重していただきたい。ほんとにやめたげて。

  ▼黒ヶ峰町

    複数の探索者が生還したことにより、狂信者は今後の対応を迫られることとなる。近隣市町村にいる狂信者側の協力者が何らかの理

   由で隠蔽工作に失敗した場合、『01.シナリオ概要』に記載されている手順で黒ヶ峰町を放棄する。しかし探索者がこれを知る術はない

   ため、描写には関係ないのだが。

    狂信者は教団の存在隠蔽を第一に考えるが、それでも黒ヶ峰町にかけたコストは決して安いものではないため、町の放棄はなるべく

   なら避けたい手段である。百数十の住民を揃えるのにどれほどの手間がかかったと思っているのだ。

 

 

 

 

 

 ○特殊END-001『吊るされたよそ者』

   黒ヶ峰町に連れてこられた人物の主観描写によるエピローグ。探索者達は集落で捕らえられた後、大村と同様の運命を辿った。脱出を

  試みてより数日後、全員揃って電柱に吊るされたのである。

   この黒ヶ峰町はどこかおかしい。皆がお互いに顔見知りというくらいには小さな町なのだが、ここ最近人が増えたり減ったりしている

  ような気がする。私の思い違いでなければ先週は○○人(探索者の人数+黒羽、大村)も町からいなくなったように思える。だが、いなく

  なった人の事を問いかけても誰も覚えていないのだ。ひょっとして私がおかしくなってしまったのか?

   思い悩みながら職場へ向かって歩いていると、視界の上方に何かが映った。それを見上げた瞬間、私は悲鳴を上げた。何人もの男女が

  見るも無惨な姿となり、電柱に吊るされていたのだ。このまま気が狂ってどうにかなってしまいそうだ。

 

 「どうされましたか? 大丈夫ですよ大丈夫。ええ大丈夫ですとも」

   悲鳴を上げる私に女性が声をかけた。しかし、何が大丈夫だというのか。人が死んでいるを訴えても女性は大丈夫と繰り返すし、木陰

  で休むよう提案した。貴方がそこまで言うならと、女性が警察へ連絡してくれることとなった。どうにも変な女性だが、警察が来てくれ

  たらなんとかなるはずだ。私は女性に促されるがまま木陰に入り、腰を下ろした。 

 

   数日後、新たな死体が黒ヶ峰町に吊るされた。

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